2026年10月22日

みなさん、こんにちは。院長の太田光彦です。
10月に入り、朝晩はめっきり寒くなってきましたね。寒暖差が大きいと心臓に負担がかかりやすいので、気を付けて過ごしましょう。
さて、これまで心不全の種類や検査、治療法についてお伝えしてきました。今回は、心不全と関係の深い「高血圧」にも触れていきたいと思います。高血圧が心臓にどのような影響を与えるのか、心不全につながる仕組み、今からできる予防法についてお話しします。
本記事の概要
高血圧は自覚症状がないまま心臓に負担をかけ、長く続くと心肥大や心拡大を引き起こし、心不全につながることがあります。本記事では、高血圧が心臓に与える影響や心不全になる仕組み、BNP検査について循環器内科医が解説。血圧を適切に管理するための日常生活のポイントや、受診を検討する目安についても紹介します。
高血圧とはどんな状態?
高血圧とは、血管の中を流れる血液の圧力が慢性的に高くなっている状態です。自覚症状がほとんどないまま進むことが多いため、「元気だから大丈夫」とは限りません。血圧が非常に高いときには、後頭部の頭痛、めまい、動悸などが起きることもあります。
血圧の分類(高血圧治療ガイドライン2025より)
日本高血圧学会が定める高血圧の基準は、「上の血圧(収縮期血圧)が140以上、下の血圧(拡張期血圧)が90以上」です(※1)。日本での高血圧患者数は推定約4,300万人とされており、およそ3人に1人が高血圧という状況です。
※1 病院・診察室の測定値です。自宅で測る家庭血圧では、上の血圧が135以上、下の血圧が85以上となります(家庭では少し低めになるため基準が下がります)。

高血圧を放置すると、何が怖い?
高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれ、目立った症状がないまま血管や心臓への負担を増大させます。実際、脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわる病気をした人で、高血圧がずっと続いていたというケースは少なくありません。
高血圧が常態化すると、心臓は血管内の強い圧力に逆らって血液を送り続けます。それによって、心臓の筋肉が厚くなったり、心臓が硬くなったりすることがあります。たとえば、重い荷物を毎日持ち続けていると、筋肉に負担がかかるのと同じです。心臓も、高い血圧に対応するために無理をし続けることで、血液を十分に受け入れたり、全身へ送り出したりする力が低下します。この状態が改善されないままでいると、心不全につながる可能性があります。
心不全になると、日常生活にも影響が出ることも

心不全とは、心臓のはたらきが低下することで、全身に必要な血液を送り出せなくなったり、血液が心臓や肺などに滞ったりする状態です。
その結果、坂道や階段で息切れする、以前より疲れやすくなる、足がむくむ、夜中に息苦しくなるといった症状が現れます。心不全になると減退した心臓のはたらきは元の状態には戻らないため、生涯にわたって治療が必要となります。だからこそ、心不全にならないように早い段階で高血圧を解消し、心臓への負担を減らすことが大切です。
「心臓が大きくなる」とは? 高血圧が続くと起こる変化
「高血圧が続くと心臓が大きくなる」と言われることがあります。これは、単純に心臓全体が大きくなるというよりも、心臓の筋肉が厚くなったり、心臓の部屋(心室)が大きくなったりする「心肥大」や「心拡大」を指します。

心臓の筋肉が厚くなる「心肥大」とは
血管内部の強い圧力に逆らって血液を送り出し続けることで、心臓の筋肉が厚くなった状態です。筋肉が厚くなることは力が強くなったようにも思えますが、心臓の筋肉が厚くなると、心臓が十分に広がりにくくなり、血液を受け入れにくくなります。
心臓の部屋が広がる「心拡大」とは
心臓のポンプ機能の低下を補うため、心臓の部屋の広がりが大きくなっている状態です。収縮力が弱まり、血液をうまく送り出せなくなります。
高血圧から心不全になるのを防ぐには?

高血圧による心臓への負担を減らすには、まず血圧を管理することが重要です。そして、気がかりな点があれば、循環器内科で異常がないか確認しましょう。
日本高血圧学会が定める降圧目標:
診察室血圧:130/80mmHg未満(家庭血圧:125/75mmHg未満)
高血圧が気になるときは循環器内科へ
健康診断で高血圧を指摘されたり、再検査を案内されたりした際には、循環器内科へ相談しましょう。
特に、以前よりも血圧が高くなってきた、薬を飲んでいるのに血圧が下がらない、息切れや動悸、むくみなどが気になるという場合は、血圧だけでなく心臓の状態も確認することをおすすめします。
◆いち早く受診が必要な状態
・健康診断で高血圧を指摘された
・上の血圧が160以上、下の血圧が100以上
※脳卒中・心臓病・腎臓病の悪化のリスクが高まります
◆受診を検討した方がいい状態
・上の血圧が140~159、下の血圧が90~99
※1か月程度生活習慣を見直し、血圧が下がらなければ受診を検討ください
「BNP検査」で心臓への負担を調べる
BNP(Brain Natriuretic Peptide)は、「脳性ナトリウム利尿ペプチド」と言われ、心臓に負担がかかったときに、心臓から血液中へ分泌される物質です。血液中のBNPを測ることで、心臓にどの程度負担がかかっているのか、心不全の可能性があるかを調べる手がかりになります。
ただし、BNPの数値だけで心不全を判断することはできません。年齢や腎臓の状態などによっても数値が変化するため、問診やほかの検査とあわせて総合的に判断します。
・BNPが高いが、血圧が高くないケース
加齢や貧血、機能低下などが原因で心房や心室にかかる圧力が上がっている。
・BNPが高くないが、血圧が高いケース
心臓への負担が、心房や心室の壁を引き伸ばすほど大きくない(心不全や著しい心肥大に至っていない)。
日常生活でできる、高血圧の改善ポイント

血圧を管理するためには、毎日の生活習慣も大事です。いきなりすべてを変えるのではなく、できることから取り組みましょう。
- ・降圧薬(血圧を下げる薬)を処方されている場合は、自己判断で中断しない
- ・塩分を摂りすぎない
- ・適正体重を保つ
- ・無理のない範囲で身体を動かす
- ・飲酒量を見直す
- ・禁煙する
「忙しくて運動する時間がない」という方も、エレベーターではなく階段を使う、ひと駅分歩くなど、無理のない範囲で行うと続けやすいです。
健康な暮らしを保つため、高血圧を改善して心不全を防ぐ

高血圧は、自覚症状がないからこそ放置してしまいやすいものです。しかし、血圧が高い状態が長く続けば、心臓・血管にも少しずつ負担がかかり、心不全につながることもあります。
そのため、心不全になってから慌てて対処するのではなく、今の段階から血圧を適切に管理し、心臓への負担を減らしておくことが大切です。「健康診断で血圧が高いと言われたけれど、特に症状はない」という方も、まずは自分の血圧を知ることから始めてみてください。
また、息切れやむくみ、動悸など気になる症状がある場合は、循環器内科にご相談ください。今の心臓の状態を確認することが、これから先も元気に過ごすための一歩になります。
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よくある質問
Q1.高血圧は心不全の原因になりますか?
A. はい。高血圧が長く続くと、心臓は強い圧力に逆らって血液を送り続けるため、心臓の筋肉が厚くなったり硬くなったりします。その結果、心臓の働きが低下し、心不全につながることがあります。
Q2.BNP検査で心不全がわかりますか?
A.BNP検査は、心臓にどの程度負担がかかっているか、心不全の可能性があるかを調べる手がかりになります。ただし、BNPの数値だけで心不全と判断することはできず、症状や心電図、心エコーなどの検査とあわせて判断します。
Q3.高血圧が気になる場合、何科を受診すればよいですか?
A. 高血圧に加えて息切れ、動悸、むくみなどの症状がある場合は、循環器内科への相談がおすすめです。健康診断で高血圧を指摘された場合も、血圧だけでなく心臓への影響を確認してもらうとよいでしょう。