2026年7月09日

みなさん、こんにちは。院長の太田光彦です。
徐々に暑さが厳しくなり、寝苦しい夜も増えてきました。睡眠不足は、これまでお話をしてきた不整脈を招く一因とされています。通気性のよい寝具を選ぶ、室温を25~28度に保つなど、睡眠環境を整える工夫をしましょう。
さて、今回は不整脈の治療法について解説をします。
本記事の概要
不整脈の治療が必要と診断された方へ向けて、主な治療法や費用、公的な支援制度について解説します。薬による治療、カテーテル治療、ペースメーカ・植込み型除細動器(ICD)など、それぞれの特徴や入院期間・費用の目安をご紹介。高額療養費制度など治療費の負担を軽減できる制度についても分かりやすくまとめました。不整脈のなかには脳梗塞や心不全につながる危険なタイプもあるため、診断を受けたら早めに治療方針を相談することが大切です。
不整脈を放置すると危険? まずは治療が必要かを見極める
不整脈にはさまざまなタイプがあり、脳梗塞や心不全など命に関わるものもあれば、経過観察でよいものもあります。見た目の症状だけでは区別が難しいため、原因をしっかり調べて、治療が必要かどうかを判断することが大切です。
不整脈の治療は「薬」「手術」「ペースメーカ等の使用」が中心
不整脈の治療は、大きく分けると「薬で症状を抑える治療」「外科手術で原因部分を根治する治療」「ペースメーカ等で脈を安定させる治療」の3つがあります。どの方法が適しているかは、不整脈の原因や症状の出方などを考慮して医師が判断します。
なお、本記事で紹介する治療法はいずれも健康保険の対象です。
薬で症状をやわらげ、合併症のリスクを抑える治療

動悸やめまいなどの症状を緩和したり、脈の乱れをコントロールしたりするために、まず検討される治療です。不整脈の種類によっては、脳梗塞などの合併症を予防する目的も担います。
目指すのは、動悸や息切れに悩まない日常
不整脈で使われる薬は作用が細かく分かれており、患者さまのライフスタイルや持病の有無などを考慮して必要な薬を組み合わせます。代表的な分類は以下の通りです。
・動悸や脈の速さを抑える薬
心拍数を適切な範囲に調整するために使用します。心不全などの合併症を起こしにくくする役割もあります。
・発作を起こりにくくする薬
症状が強い場合には、心臓の電気信号の乱れを抑えて発作を起こりにくくする「抗不整脈薬」を使用します。
・不整脈による脳梗塞を防ぐ薬
不整脈の種類によっては、血の塊(血栓)ができやすくなり、脳梗塞を引き起こすことがあるため、血液を固まりにくくする「抗凝固薬」を使用します。 服用中は出血しやすくなるので、ほかの病気の治療を受ける際には、抗凝固薬を服用していることを伝える必要があります。普段の生活での打撲や切り傷にも気を付けましょう。
手術で不整脈の原因そのものを取り除く治療

薬だけでは十分な効果が得られない場合や、根本的な改善が期待できる不整脈で検討されます。
代表的なのが、細い管(カテーテル)を血管から心臓まで進めて治療する方法。胸を大きく切開する必要がなく、体への負担を抑えながら治療できることが特徴です。
異常な電気信号を止めて、不整脈の改善を目指す「カテーテルアブレーション」
不整脈の原因となる異常な電気信号が発生している場所を熱で処置し、心臓のリズムを正常にすることを目指します。これまでは冷却ガスで異常な電気信号を遮断するクライオ(冷凍)アブレーションを行うケースがほとんどでしたが、近年は後述のパルスフィールドアブレーションが主流となってきています。
・入院期間:3泊4日前後。手術後しばらくは症状が不安定なこともありますが、多くは時間とともに落ち着いていきます。
・手術費の目安(3割負担): 約45万~60万円。
合併症リスクを抑えたカテーテル治療「パルスフィールドアブレーション(PFA)」
熱を利用する従来のカテーテル治療とは異なり、特殊な電気エネルギーを利用して、異常が起きている心筋細胞だけにアプローチする治療です。血管、神経、食道などの周囲組織への影響を抑えられ、手術時間の短縮も実現しています。2024年に導入された治療法で、この治療を受けられるのは一定の基準を満たした医療機関に限られます。
・入院期間: 3泊4日前後
・手術費目安(3割負担): 約45万~60万円
医療機器を使い、脈を安定させる治療
命にかかわる不整脈がある場合には、心臓の働きをサポートする医療機器を植え込む治療を検討します。脈が遅くなりすぎるのを防ぐ「ペースメーカ」や、速すぎる脈を検知して正常なリズムに戻す「植込み型除細動器(ICD)」があります。
ペースメーカで心拍を補い、心臓を規則正しく動かす
脈が極端に遅くなり、めまいや失神などの症状が出る不整脈では、ペースメーカを植え込む治療が行われます。ペースメーカは心臓の動きを常に監視し、脈が遅くなりすぎたときに電気信号を送り、心臓を規則正しく動かす医療機器です。本体には電池や電気回路が内蔵され、細いリード線を通して心臓に信号を送ります。
・入院期間:1週間程度。手術後は約6カ月ごとの定期検診で状態を確認します。
・手術費の目安(3割負担):約45万円

2017年9月からは、10円玉ほどの大きさの機器を心臓内に直接留置する「リードレスペースメーカ」が日本国内で保険適用となりました。本体やリード線を入れるポケットが要らないため、感染症リスクを低減できることがメリットです。電池の寿命は10~15年ほどで、電池が消耗した際には本体を交換する手術を行います。
突然死のリスクが高い方に用いる植込み型除細動器(ICD)
脈が異常に速くなる不整脈には、植込み型除細動器による治療を行います。ペースメーカ同様に心臓の動きを常時監視し、危険な不整脈を検知したときには自動で電気ショックを与えることで、心臓のリズムを正常にします。
・入院期間: 1週間程度。電池寿命に応じて5~7年ごとを目安に電池交換が必要です。
・手術費の目安(3割負担):約135万~180万円
公的制度を活用して、治療の負担を最小限に

医療機関で支払った医療費が1ヶ月(月初から月末まで)の自己負担限度額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。限度額は年齢や所得によって異なりますが、高額な手術や入院でも実際の負担を大きく抑えられるケースがあります。
また、医療費が高額になることが分かっている場合は、「限度額適用認定証」を利用すれば、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることが可能。マイナ保険証を使う場合は、原則として事前申請は不要です。
協会けんぽ「限度額適用認定証・高額療養費・高額介護合算|給付と手続き」
身体障害者手帳による助成制度を利用できる場合も
ペースメーカや植込み型除細動器を装着した場合は、状態に応じて「身体障害者手帳」の対象となることがあります。認定を受けると、等級に応じて医療費の助成や障害年金、税金の控除、公共料金や交通機関の割引などの支援制度を利用できます。
手続きや制度の範囲は、お住まいの自治体や障害の程度によって異なるため、利用できる支援について予め確認しておくと安心です。
全国障害年金サポートセンター「障害者手帳とは?制度やメリットをわかりやすく解説」
不整脈と上手につき合うために
不整脈の治療では、薬で様子を見る方もいれば、カテーテル治療やペースメーカなどが必要な方もいます。原因や症状は一人ひとり異なるため、個々の状態に応じた治療を行うことが大切です。適切な治療を受けることで、辛い症状が改善し、仕事や旅行、趣味などをこれまで通り楽しめるようになった方もいます。
当クリニックでは、検査結果や症状、生活スタイルも踏まえながら、患者さまに合った治療をご提案しています。高度医療が必要な方には信頼できる医療機関へご紹介しています。不整脈を指摘された方や気になる症状がある方は、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

よくある質問
Q1.不整脈の治療にはどんな方法がありますか?
A.大きく3つに分かれます。①動悸や脈の乱れを薬でコントロールする「薬物療法」、②カテーテルを血管から心臓まで進め、異常な電気信号を処置する「カテーテルアブレーション(手術)」、③ペースメーカや植込み型除細動器(ICD)を体内に植え込み、脈を安定させる「医療機器による治療」です。いずれも健康保険の対象です。
Q2. カテーテル治療を受けたら、不整脈は完全に治りますか?
A.不整脈の種類によって異なります。カテーテルアブレーションは、不整脈の原因となる異常な電気信号を発生させる部位を治療するため、根本的な改善が期待できる不整脈もあります。一方で、再発予防のために薬を併用したり、経過観察が必要になったりするケースもあります。
Q3. 不整脈の治療費が高額になる場合、費用負担を抑える方法はありますか?
A. 高額療養費制度を利用すれば、1ヶ月の医療費が自己負担限度額を超えた分は払い戻されます。費用が高額になることが事前にわかっている場合は「限度額適用認定証」を使うことで、窓口での支払いを限度額までに抑えることも可能です(マイナ保険証利用時は原則申請不要)。ペースメーカやICDの植え込みは費用が大きくなりますが、制度を活用することで実質負担を大幅に軽減できます。