2026年1月14日

みなさん、こんにちは。院長の太田光彦です。
冬は心臓のトラブルが発生しやすい季節です。国立循環器病研究センターの調査によると、冬期に心筋梗塞の死亡件数が増加することがわかっています。
国立研究開発法人国立循環器病研究センター「冬場は心筋梗塞による心停止が増加」 https://www.ncvc.go.jp/pr/release/003108/ (2026年1月14日 閲覧)
また、年末年始は生活リズムが乱れ、体調を崩しやすくなります。医療機関の休診も増えるため、急病になった場合に備えて休日や夜間診療を行っている病院を確認しておきましょう。
さて、今回からは「心筋梗塞」についてお話します。突然倒れる病気というイメージから、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事の概要
突然発症する印象が強い心筋梗塞ですが、生活習慣や体質など事前に気づけるリスク因子が隠れています。本記事では、心筋梗塞が遺伝するのかという疑問を出発点に、原因や症状、なりやすい人の特徴を循環器専門医がわかりやすく解説します。日常生活の違和感を「年齢のせい」と見過ごさず、受診の目安を知ることで、早期発見・重症化予防につなげることができます。
心筋梗塞とはどんな病気?

心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血液を送る「冠動脈」が詰まって血液が流れなくなり、心臓の筋肉である「心筋」に酸素と栄養が届かなくなることで、心筋組織が壊死する病気です。
心臓は365日24時間休むことなく、全身に血液を送り出しています。その心臓のポンプ機能を維持するために必要な酸素と栄養を供給しているのが冠動脈です。大動脈から枝分かれして心臓を覆っていて、主に右冠動脈と左冠動脈(左前下行枝・左回旋枝)から構成されます。
心筋梗塞が起こる原因
冠動脈に血栓(血の塊)ができ、血液の通り道が閉鎖されてしまうことが心筋梗塞の原因です。血管の内側にたまったプラーク(脂質)が破れて血の塊ができ、血管が急につまるイメージです。
血栓ができる要因は、血管が厚く硬くなり弾力性を失って血流が悪くなる「動脈硬化」がほとんどで、その背景には肥満や喫煙、生活習慣病などがあります。

心筋梗塞と狭心症の違い
心筋梗塞とよく似た病気に「狭心症」があります。
心筋梗塞は、冠動脈が完全に塞がり血流がなくなった状態に対して、狭心症は冠動脈が狭くなって血液の流れが悪い状態です。
症状の出方にも違いがあり、心筋梗塞は安静時でも胸部に圧迫感や強い痛み、吐き気があります。一方、狭心症は坂道や階段を上るなど運動時に息切れや動悸が生じます。
ただし、症状には個人差があるため、狭心症でも安静時に症状が出ることや、心筋梗塞でも初期症状が軽い場合もあります。

心筋梗塞は遺伝する?家族歴との関係
突然起こる病気と思われがちな心筋梗塞ですが、その背景には積み重なるリスク因子があります。心筋梗塞の発症原因は冠動脈に血栓ができることであり、血管を詰まらせる原因をたどっていくと発症リスクが高い人がわかります。
心筋梗塞そのものに遺伝性はある?
「家族に心筋梗塞の人がいると、自分もなりやすいのでは」と不安に感じる方も多いでしょう。しかし、心筋梗塞そのものに遺伝性はありません。
ただし、発症の大きな要因となるのが、冠動脈が狭くなる「動脈硬化」です。
動脈硬化は、加齢に加えて、高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病によって進行します。さらに、運動不足や喫煙、強いストレス、脂質の多い食生活が重なると、血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加。その結果、血管内にプラークができやすくなります。
さらに、40代以降は血管の老化が進み、女性の場合は閉経後にリスクが一気に高まることが分かっています。
以下に当てはまる人は要注意!
□高血圧
□脂質異常症
□高脂血症
□糖尿病
□肥満
□喫煙
家族歴に心筋梗塞・狭心症がある場合に気をつけたいこと
心筋梗塞に遺伝性はありませんが、体質は大きく関与します。とくに、心筋梗塞や狭心症を40代前後で発症した家族がいる場合は注意が必要です。
高血圧、糖尿病、高コレステロール血症といった心筋梗塞のリスク因子は遺伝する傾向があるので、心筋梗塞になりやすいといえます。そのため、まずは診察を受けたうえで、医師と相談しながら心臓や血管の状態を確認することが大切です。状況によっては、心臓ドックや動脈硬化の検査が参考になる場合もあります。
また、家族性高コレステロール血症(FH)が疑われるケースでは、必要に応じて遺伝子検査を検討することもあり、現在は保険診療の対象となっています(2022年4月より保険適用)。
一般社団法人日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症に関する保険診療での遺伝子解析検査について」
https://www.j-athero.org/jp/fh_hokenshinryoyu_idenshikensa/(2026年1月14日 閲覧)
心筋梗塞の前兆・初期症状とは?
発症前に体からのサインが現れることがあります。心筋梗塞の前兆として、胸がギュッと締めつけられるような圧迫感や、強い胸の痛み、胸やけなどが現れます。
まれに自覚症状なく発症する人もいますが、多くの人は発症前にこうした前兆を経験します。
見逃されやすい症状。息切れや動悸、胸痛
階段を上ると息切れする、胸焼けがする、胸に圧迫感があるといった症状が現れたら、心筋梗塞の前段階である「狭心症」を発症している可能性があります。
数分でおさまるため「少し休めば治る」「忙しいから後で受診しよう」と、見逃されがちですが、息切れや動悸、胸痛を繰り返す場合は、後回しにせず循環器内科を受診しましょう。
安静にしていても胸に激痛が現れたら危険なサイン
心筋梗塞になると、安静時でも胸部の中央が締めつけられるような激しい痛み、吐き気や冷や汗を伴うのが特徴です。個人差はありますが、痛みは左腕、肩、背中、首、あごにまで広がることもあります。脱力感やめまい、意識が遠のくことも。
激しい胸痛や吐き気が20分以上続くようであれば、迷わず救急車を呼んでください。
気になる症状がある場合は、早めに循環器内科で検査を
少しでも気になる症状があれば、「年齢のせい」「疲れているだけ」と自己判断せず、早めに循環器内科へご相談ください。特にご家族に心筋梗塞や狭心症の既往歴がある方や生活習慣病を指摘されている方は、症状がなくても一度検査を受けておくことが安心につながります。

FAQ
心筋梗塞は本当に遺伝しないのですか?
A. 心筋梗塞そのものに直接的な遺伝性はありません。ただし、高血圧・糖尿病・脂質異常症といった発症リスクを高める体質や生活習慣は遺伝の影響を受けることがあります。家族に若くして(40代前後)心筋梗塞や狭心症を発症した方がいる場合は、早めの検査や生活習慣の見直しが大切です。
心筋梗塞の前兆にはどのような症状がありますか?
A. 代表的な前兆には、階段での息切れ、胸の圧迫感、胸やけのような違和感、動悸などがあります。数分で治まることも多く、疲れや加齢と自己判断して見過ごされがちですが、繰り返す場合は狭心症や心筋梗塞の前段階の可能性があります。
症状が軽くても循環器内科を受診したほうがいいですか?
A. はい。心筋梗塞や狭心症は、症状が軽い段階では検査をしないと分からないことも少なくありません。特に家族歴がある方や生活習慣病を指摘されている方は、症状が強くなる前に循環器内科で検査を受けることで、重症化を防げる可能性があります。