2025年11月30日

みなさん、こんにちは。院長の太田光彦です。
初雪の便りが届くようになりました。
冬は心臓や血管の病気が起こりやすい季節です。屋内外の寒暖差だけでなく、室内の温度差もあります。トイレや脱衣所は冷えており、血圧が急激に上がりやすくなるので、注意をしましょう。
さて、これまで心臓弁膜症についてお話をしてきました。心臓に異常があると言われたら誰しも不安になるでしょう。しかし、安心してください。治療法の記事でもお話ししましたが、心臓弁膜症は治療法が確立されている病気です。
今回は心臓弁膜症の治療の向き合い方についてお話しします。
本記事の概要
心臓弁膜症はすぐに手術が必要とは限りません。本記事では、受診のポイント、病院選びの基準、治療費の目安までをわかりやすく解説します。不安を抱えたまま過ごさず、今の状態に応じて「何をすればいいのか」が明確になるため、安心して治療の第一歩を踏み出せます。
心臓弁膜症について正しく理解をする
心臓弁膜症と診断されると、まずは医師から病気の状態について説明を受けることになります。突然のことで動揺される方もいらっしゃいます。すぐに理解するのが難しいケースもありますが、どんなことでも遠慮せずに質問をしてください。
パンフレットや模型を使って説明

病気の説明となると、どうしても専門用語が多くなり、わかりにくいことが多いですよね。そこで、当クリニックでは理解を深めてもらうためサポートとして、医師が監修・作成したパンフレットを活用しています。心臓弁膜症とはどんな病気かがわかることで、少しでも不安が取り除けるのではと思っています。
今はインターネットで簡単に調べられる時代ですが、正しい情報とは限りません。病状にも個人差があります。そのため、医師による説明と専門のパンフレットをもとに、病気について正しく知ってほしいと思います。
家でゆっくりと読んでいただき、わからないことや不安なことをまとめて、診察のときに医師にたずねてください。メモをしておくといいでしょう。

(正常な弁と、狭窄した弁の模型で説明することも)
治療を受ける病院はまずかかりつけ医に相談を
当クリニックは循環器内科なので手術はできません。心エコー検査や運動負荷心エコー検査などを行い、手術が必要な患者様には連携している医療機関を紹介しています。また、地元で治療を受けたいという希望があれば、できる限り患者様の要望に応えられるようにしています。
動悸、息切れなどが続くときは、早めの受診が安心
心臓の病気は循環器内科を受診するのが一般的ですが、町のクリニックで専門としているところはまだ少ないようです。そのため、当クリニックには遠方から来院される方も多いです。
かかりつけの内科でも診てもらうことはできますので、もし正常な心臓の音以外に「ザーザー」「シューシュー」などといった「心雑音」が確認されたら専門医を紹介してもらいましょう。
病院選びでは機器の有無や実績数も参考に
どこで診てもらったらいいのかと、病院選びから悩む方もいらっしゃいます。大規模病院を受診するためには紹介状が必要なので、まずはかかりつけ医に相談をするのがよいでしょう。
かかりつけ医がいない場合は、専門医が在籍していて心エコー検査などの機器が揃っている病院を探します。手術までを見据える場合は、手術実績がどれくらいあるのかも判断基準になるでしょう。
心臓弁膜症の治療費は保険適用を受けられます

心臓の手術というと高額な治療費がかかると思われ、躊躇される方もいらっしゃいます。手術方式にもよりますが、心臓弁膜症の場合は多くが保険適用なので、ご安心ください。
医療費が高額になるときは、高額療養費制度を利用可能
心臓弁置換術の場合、1弁あたり500万円ほど医療費がかかりますが、健康保険3割負担では150万円ほどになります(自己負担額は前後します)。TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)もほぼ同じです。
3割の自己負担でもかなりの高額となりますが、保険適用後に「高額療養費制度」を利用することで自己負担額を軽減することができます。高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、超過分の金額を支給する公的医療保険の制度です。
70歳以上の年金暮らしの方であれば、入院費用を含め月5〜10万円ほどの自己負担で済みます。ただし、年齢や所得によって自己負担限度額は異なりますので、各種健康保険の窓口や病院の医事課にお問合せください。
心臓弁膜症は自然には治らない。だからこそ「適切なタイミング」で治療を
心臓弁膜症は自然治癒する病気ではなく、適切なタイミングで適切な治療を受けることが大切です。過剰に恐れることなく、専門医の指導に従いながら様子をみて、ベストなタイミングで治療・手術を受けられるようにしましょう。
A. 信頼できる医療機関の情報や、専門医が発信する資料を参考にしましょう。そのうえで、症状の出かた・進行の特徴・検査方法を把握すると、医師からの説明も理解しやすくなります。

FAQ
Q1. 心臓弁膜症について正しく理解するためには?
A. 信頼できる医療機関の情報や、専門医が発信する資料を参考にしましょう。そのうえで、症状の出かた・進行の特徴・検査方法を把握すると、医師からの説明も理解しやすくなります。
Q2. どの病院で治療を受ければいいか迷うときは?
A. まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医のいる医療機関を紹介してもらいましょう。心エコー検査の設備や手術実績の有無も病院選びの判断基準になります。
Q3. 治療費はどのくらいかかりますか?
A. 受ける治療によって大きく異なります。薬物療法のみの場合は比較的少額ですが、手術(弁形成術・弁置換術・TAVIなど)を行うと保険適用で自己負担は数十~百数十万円が目安です。ただし、高額療養費制度を利用することで、実際の自己負担は所得に応じた限度額まで抑えられます。