2026年3月19日

みなさん、こんにちは。院長の太田光彦です。
3月は三寒四温で寒暖差が大きく、体調を崩しやすい時季です。寒暖差は自律神経のバランスを崩しやすいので、気分の落ち込みやめまい、不眠などの不調があらわれることもあります。1日の気温差に合わせて服装を調整するなど、体に負担をかけないよう工夫して過ごしましょう。
さて、今回は「狭心症の種類」についてお話をします。
本記事の概要
胸の痛みや締めつけ感、息苦しさなどの症状は、狭心症のサインかもしれません。狭心症には「労作性狭心症」「不安定狭心症」「冠攣縮性狭心症」「微小血管狭心症」などいくつかの種類があり、それぞれ症状の現れ方や起こるタイミングが異なります。なかには検査で異常が見つかりにくいタイプもあり、「大丈夫だろう」と自己判断してしまうケースも少なくありません。本記事では、狭心症の種類と症状の特徴、受診の目安について医師がわかりやすく解説します。
狭心症は種類によって症状が異なります
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。その心臓自身に酸素や栄養を届けているのが、冠動脈と呼ばれる血管です。
狭心症は、この冠動脈の血流が一時的に不足することで起こる病気です。心臓の筋肉である心筋が酸素不足の状態になり、胸の締めつけ感や圧迫感、痛みなどの症状があらわれます。

一口に胸の症状といっても、「階段をのぼると苦しくなる」「安静にしているのに突然痛む」「夜中や早朝に胸が締めつけられる」など、感じ方や起こるタイミングは人によってさまざまです。
こうした違いは「狭心症の種類」の違いによって起こります。
運動時に発作が起きやすい「労作性(ろうさせい)狭心症」
階段をのぼったときや坂道を歩いたとき、小走りをしたときなどに胸が締めつけられるように苦しくなる場合は、「労作性狭心症」が疑われます。
・症状の特徴
体を動かしたときに症状が出やすいことが特徴です。たとえば「通勤で駅の階段をのぼると胸が苦しくなる」「ジムで運動をするたびに胸が締めつけられる」といったように、同じような場面で症状を繰り返すことがあります。
こうした症状に気づいたときは、循環器内科で一度相談することをおすすめします。
・原因
体を動かすと心臓はより多くの血液と酸素を必要とします。しかし、冠動脈が動脈硬化によって狭くなっていると十分な血液を送り届けることができず、心筋が酸素不足になり胸の痛みや圧迫感が起こります。
痛みの回数が増え、安静時にも起こる「不安定狭心症」
痛みが出る回数が徐々に増える、あるいは安静時にも胸が痛むという場合は、「不安定狭心症」の可能性があります。
・症状の特徴
胸痛の強さや発作が起こるタイミングが一定ではなく、徐々に発作の回数が増えていくのが特徴です。これまでより強い胸の痛みや圧迫感が出たり、発作が長く続いたりすることもあります。
・原因
冠動脈の内側にあるプラークが不安定になり、血管がさらに狭くなることで起こると考えられています。血流が急激に悪くなると、心筋に十分な酸素が届かなくなり胸痛が起こります。
・注意点
心筋梗塞へ進行する一歩手前の状態とされることもあり注意が必要です。「いつもと違う胸の痛みがある」「発作の回数が増えてきた」と感じた場合は、早めに医療機関を受診してください。
夜間や早朝に突然胸が苦しくなる「冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症」
夜間や明け方、安静にしているときに突然胸が締めつけられるように苦しくなる場合は、「冠攣縮性狭心症」が疑われます。
日本心臓財団によると、冠攣縮性狭心症は日本人の狭心症の約4割を占めるとされています。
・症状の特徴
安静時に突然胸の痛みや圧迫感があらわれるのが特徴です。発作は数分から十数分程度でおさまることもありますが、強い痛みを感じることもあります。
・原因
冠動脈が一時的に強く収縮することで血管が狭くなり、血流が低下します。その結果、心筋に十分な酸素が届かなくなり、胸の痛みや圧迫感が起こります。
発作は夜間や早朝に起こりやすいとされており、睡眠不足、喫煙、大量の飲酒、精神的なストレス、寒さなどがきっかけになることがあります。重症の場合には不整脈を引き起こし、突然死につながるケースもあります。
| 症状 | 発作のタイミング | おもな原因 | |
|---|---|---|---|
| 労作性狭心症 | 胸の締め付け、動悸 | 運動時 | 動脈硬化 |
| 不安定狭心症 | これまでなかった胸の痛み、圧迫感、胸やけなど | 運動時と安静時 | 動脈硬化 |
| 冠攣縮性狭心症 | 胸痛、圧迫感、息切れ、冷や汗など | 夜間や早朝などの安静時 | 冠動脈の痙攣(けいれん) |
「検査では異常なし」と言われても胸が苦しい…考えられる別の狭心症

胸の痛みや圧迫感があり医療機関を受診したものの、「心電図や検査では異常はありません」と言われた経験がある方もいるかもしれません。しかしその後も、胸の違和感や苦しさが続いている場合は注意が必要です。
こうした症状の背景に、「微小血管狭心症(びしょうけっかんきょうしんしょう、MVA: Microvascular Angina)」と呼ばれる病気が隠れていることがあります。
比較的新しい概念の病気で、臨床的に広く認知され始めたのは2000年代以降です。
心臓の細い血管の異常で起こる「微小血管狭心症」
微小血管狭心症は、心臓に血液を送る非常に細い血管(微小血管)の働きが低下することで起こると考えられています。
・症状の特徴
胸の痛みや締めつけ感、圧迫感のほか、吐き気や顎・肩・首・背中の痛みなど症状は多岐にわたります。痛みの感じ方や続く時間には個人差があり、「なんとなく胸が重い」「胸の奥がじわっと痛む」といったはっきりしない違和感として現れることもあります。
更年期の女性に多くみられ、若年層でも発症するリスクがある
労作性狭心症や不安定狭心症は、50代以降に多くみられます。一方で微小血管狭心症は、30代半ばから60代と比較的若い年代でも発症する傾向にあります。若年層(15~34歳)で胸の圧迫感や胃痛、吐き気などの症状がある場合、冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症などが原因となることもあります。
発症者で最も多いのは、更年期(閉経前後の45~55歳)の女性です。女性ホルモンであるエストロゲンには血管を守る働きがありますが、更年期になると分泌量が減少します。その影響で血管の働きが変化し、微小血管の機能が低下することがあると考えられています。そのため、更年期の女性で「胸の痛みがあるのに検査では異常がない」と言われた場合、この病気が関係している可能性もあります。
診断には専門的な検査が必要
微小血管狭心症は、一般的な心電図や冠動脈検査では異常が見つかりにくく、診断が難しい場合があります。症状や経過を詳しく確認したうえで、必要に応じて心臓の血流を調べる検査や、微小血管の働きを評価する検査などが行われます。
微小血管の検査には特殊な装置を用いるため、日本国内での検査機関は295施設(2026年1月1日現在)のみ、全国の一般病院の約4%です。
日本冠微小循環障害研究会 (J-CMD) 「CMD検査実施施設」
https://j-cmd.jp/medical/kensa.html (2026年3月19日 閲覧)
胸の痛みや違和感を感じたら、自己判断せず医療機関へ相談を

たとえ一時的でも胸に強い痛みがある、吐き気を伴うなど、胸に違和感があると不安になるでしょう。こうした症状の背景には、狭心症などの心臓の病気が隠れている可能性もあります。
ただ、これまでお伝えしてきたように、狭心症にはいくつかの種類があり、症状が出るタイミングやきっかけもさまざまです。
まずはかかりつけ医に相談を
胸の痛みや違和感、動悸などの症状が続く場合は、「様子を見ても大丈夫だろう」と自己判断せず、まずは医療機関に相談することをおすすめします。かかりつけ医がいる場合は、普段の体調をよく知っている医師に相談するのもよいでしょう。
当クリニックでは、胸の症状の原因を確認するために必要な検査を行い、状態に応じて適切な診療につなげています。検査や診察の結果、さらに詳しい検査や専門的な治療が必要と判断した場合には、連携している医療機関をご紹介することも可能です。
土曜・祝日も診療しており、当日予約も可能ですので気になる症状があるときはご利用ください。
なお、強い胸の痛みが15分以上続く場合や、冷や汗・強い息苦しさを伴う場合は緊急性の可能性があります。そのようなときは迷わず救急車(119番)を呼んでください。
胸が苦しい。受診のタイミングはいつ? 我慢しない判断基準とは?

よくある質問(FAQ)
Q1.狭心症にはどのような種類がありますか?
A.狭心症には主に、運動や階段の上り下りなどで症状が出る「労作性狭心症」、突然症状が起こりやすい「不安定狭心症」、血管の痙攣によって起こる「冠攣縮性狭心症」、細い血管の異常が原因とされる「微小血管狭心症」などがあります。種類によって症状の出方が異なるため、医師による診断が重要です。
Q2.微小血管狭心症とはどのような病気ですか?
A.微小血管狭心症は、心臓の表面を走る太い血管ではなく、心臓の筋肉の中にある細い血管(微小血管)の働きが悪くなることで起こる狭心症です。胸の痛みや圧迫感、息苦しさなどの症状があっても、一般的な検査では大きな血管に異常が見つからないことがあります。そのため「検査では異常なし」と言われることもありますが、症状が続く場合は専門的な検査が必要になることもあります。
Q3.狭心症は若い人でも発症することがありますか?
A.狭心症は中高年(約40〜65歳)に多い病気ですが、若い年代(15~34歳)でも発症することがあります。特に血管の痙攣によって起こる「冠攣縮性狭心症」や、細い血管の働きが関係する「微小血管狭心症」は、比較的若い方でもみられることがあります。
Q4.女性は狭心症になりやすいのでしょうか?
A.狭心症は男性に多いイメージがありますが、女性の発症は珍しくありません。特に女性では、心臓の細い血管の働きが関係する「微小血管狭心症」が比較的多くみられるとされています。更年期の時期を含め、気になる症状が続く場合は早めに医療機関に相談しましょう。