2026年4月01日

桜の便りが届く季節になりました。
新生活が始まる方も多くいらっしゃるでしょう。引っ越しをされる方は、万が一に備えて、夜間・休日でも受診できる病院を探しておくといいですね。
これまで狭心症の症状や種類についてお話をしてきました。今回は治療について説明をします。
本記事の概要
狭心症と診断されると、「どんな治療をするのか」「費用はどれくらいかかるのか」と不安を感じる方も多いでしょう。本記事では、狭心症の治療について、薬物療法・カテーテル治療・手術の違いから、治療にかかるお金のことまで、循環器専門医がわかりやすく解説します。狭心症は適切な治療を行い、心筋梗塞を予防することが大切です。安心して日常生活を送るためのポイントもあわせてご紹介します。
狭心症は自然に治る?進行するとどうなるの
狭心症は自然に治る病気ではないため、重症度に応じて適切な治療を行うことが大切です。狭心症そのものが命に直結するケースは多くありません。しかし、病状が進行すると心筋梗塞へ移行し、命に関わる危険性があります。
そのため、狭心症と診断された段階で治療を始め、発作を抑えながら進行を防ぐことが重要です。治療法には「薬による治療(薬物療法)」と「血流を改善する治療(カテーテル治療・手術)」があります。症状や検査結果に応じて、一人ひとりに合った治療方針を決めていきます。
また、狭心症を引き起こす心筋梗塞を予防するため、生活習慣の見直しも同時に行います。

発作を抑え、再発を防ぐための「薬による治療」
狭心症の治療は、心臓への負担を減らして日常生活を安心して送れる状態を目指します。まずは薬によって症状をコントロールし、発作を起こしにくくします。症状が落ち着いたあとも、再発を防ぐために長期間の服用が必要です。
・発作時のつらい症状を和らげる薬
息苦しさや胸痛が起こったときに使用するのが、舌の下で溶かして使う「ニトログリセリン」です。血管を広げて血流を改善し、数分で症状を和らげる効果があります。
また、心拍数を抑えて心臓の負担を軽減する薬(βブロッカーなど)を日常的に服用することで、発作そのものを起こりにくくする治療も行います。
・血液を固まりにくくし、冠動脈内の詰まりを防ぐ薬
血管の中で血の塊(血栓)ができるのを防ぐために、「抗血小板薬」を使用します。代表的な薬にアスピリンがあります。
血液を固まりにくくする作用があるため、出血しやすくなることがあります。服用中はケガや出血に注意しましょう。胃の粘膜を守るため、胃薬と併用します。
・動脈硬化の進行を抑える薬
狭心症の多くは動脈硬化が関係しています。その進行を抑えるために、LDL(悪玉)コレステロールを下げる薬(スタチン系薬剤、ベムペド酸薬剤など)を使用します。これらの薬は、血管の状態を安定させ、将来的な心筋梗塞のリスクを下げる効果も期待されます。
また、状態に応じて新しいタイプの薬や注射薬が選択されることもあります。
なぜ薬でコレステロールを下げるの?
日本動脈硬化学会のガイドラインでは、狭心症の再発予防には、LDL(悪玉)コレステロール値「70mg/dL未満」が推奨されています。食生活の見直しだけではこの数値まで下げることが難しいため、薬を用いて70mg/dL未満を保ちます。
なお、薬によっては副作用が生じることもあります。心配なことや気になることがあれば医師や薬剤師に相談しましょう。
薬でコントロールできない場合は「血流を改善する治療」
薬による治療を行っても発作が繰り返し起こる場合や、血管の狭さが強い場合には、血流を改善する治療を検討します。この治療では、症状の改善だけでなく将来的なリスクを下げ、穏やかな生活を取り戻すことを目指します。治療後の職場・社会復帰も可能です。
カテーテルで血管を広げる治療(ステント治療)
カテーテル(細い管)を血管から挿入し、狭くなった血管を広げる治療です。
手首または足のつけ根からカテーテルを差し込み、「ステント(特殊な網目上の金属筒)」を、狭くなっている血管部分に固定し、血管が再び狭くなるのを防ぎます。治療後には、血液を固まりにくくする薬を服用する必要があります。
カテーテル治療はメスを使わないため傷口は数㎜程度で、開胸手術と比べて体への負担が軽いのがメリットです。手術時間は2〜3時間、入院は3泊4日程度です。

血流の通り道を新しくつくる手術(冠動脈バイパス手術)
複数の血管に強い狭窄がある場合などには、別の血管を使って新しい血流の通り道をつくる手術(冠動脈バイパス手術)を行います。
胸を切り開いて行うため、体への負担は大きくなります。全身麻酔を使うので回復に時間がかかり、入院期間は2〜3週間ほどです。

狭心症の治療費は、公的保険で負担を抑えられます
カテーテル治療や手術など、血流を改善する治療は費用が高額になることもあります。ただし、公的医療保険や各種制度を利用することで、自己負担額は一定の範囲に抑えられるケースがほとんどです。
医療費の自己負担を抑えられる「高額療養費制度」
医療機関で支払った医療費が、1カ月あたりの上限額を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。年齢や所得によって上限額は異なりますが、多くの場合、自己負担は一定額に抑えられます。
支払った医療費の一部が戻る「医療費控除」
1年間に支払った医療費が一定額(一般的には10万円)を超えた場合、確定申告を行うことで所得税の一部が還付される制度です。通院のための交通費なども対象になる場合があります。
仕事を休んだときに受け取れる「傷病手当金」
会社員や公務員などが病気で仕事を休み、給与が支払われない場合に受け取れる制度です。条件を満たせば、休業中の生活を支える給付を受けることができます。
高額療養費制度・傷病手当金の詳細は健康保険の窓口へ、医療費控除は最寄りの税務署で相談可能です。

再発を防ぐために、生活習慣の見直しも大切です
狭心症は「完全に治す」というよりも、薬や治療で発作を抑えながら、長く付き合っていく病気です。
たとえ手術を受けた場合でも、動脈硬化の原因となる生活習慣が続けば、再発する可能性があります。再発を防ぐためには、日々の生活を整えることがとても重要です。
- ・栄養バランスのよい食事
- ・適度な運動
- ・体重管理
- ・禁煙
これらを無理のない範囲で続けていくことが、先々のリスクを減らし、健やかな日常につながります。
病気の診断を受けると、不安を感じるのは自然なことです。狭心症は治療法が確立されており、適切に向き合うことで、これまで通りの生活を取り戻すことも十分に可能です。
焦らず、一つひとつできることから進めていきましょう。
この胸の締めつけ感は大丈夫?狭心症の原因と初期症状を医師が解説
「狭心症の種類」によって症状は違う?気になる症状をセルフチェック

よくある質問(FAQ)
Q1.狭心症の治療には何がありますか?
A.狭心症の治療は大きく分けて、薬による治療(薬物療法)と、血流を改善する治療(カテーテル治療や手術)があります。まずは薬で発作を抑え、再発を防ぐことが基本です。薬でコントロールが難しい場合や血管の狭さが強い場合には、カテーテルで血管を広げる治療や、バイパス手術が検討されます。症状や検査結果に応じて最適な方法が選ばれます。
Q2.なぜ狭心症の治療が大切なのですか?
A.狭心症は、心臓の筋肉に十分な酸素が届かなくなることで起こります。狭心症自体はすぐに命に関わるケースは多くありませんが、放置すると心筋梗塞へ進行する可能性があります。心筋梗塞は命に関わる重大な病気のため、狭心症の段階で適切な治療を行い、発作を抑えながら進行を防ぐことが重要です。
Q3.狭心症の治療にはお金がかかりますか?
A.カテーテル治療や手術などは費用が高額になることもありますが、多くの場合は公的医療保険の対象となります。さらに、高額療養費制度を利用することで自己負担額には上限が設けられており、一定額に抑えられます。また、医療費控除や傷病手当金などの制度もあり、経済的な負担を軽減できる仕組みが整っています。