2025年11月26日

みなさん、こんにちは。院長の太田光彦です。
秋の行楽シーズンですね。行楽地で急な坂道や階段を上る、長時間歩く……。日常生活では気づかなかった体調の変化を感じることがあるかもしれません。
これまでお話してきた心臓弁膜症は、自覚症状がほぼないのが特徴です。しかし、活発に動くと「息切れする」「心臓がバクバクする」など、異変に気づくこともあります。このちょっとした変化に気づけると早期発見につながりますので、気になることがあれば、ぜひ受診を検討してください。
さて、今回は心臓弁膜症における検査の重要性についてお話をいたします。
本記事の概要
心臓弁膜症は、加齢などを主な原因として徐々に進行する病気で、初期は自覚症状がほとんどありません。息切れや動悸、疲れやすさなどの変化に気づいたときには、中等症〜重症に進んでいることもあります。本記事では、心臓弁膜症が気づきにくい理由、代表的な症状、検査の必要性、受診の目安をわかりやすく解説します。早期発見の重要性を理解し、適切なタイミングで治療につなげるためのポイントをお伝えします。
心臓弁膜症は進行しても気づきにくい病気
心臓にある弁の動きが悪くなり、血液の流れに問題が生じる病気です。初期段階では自覚症状がないことが多く、気づいたときには病気が進行しているケースは少なくありません。重症になると、安静時でも息切れや胸の苦しさなどの症状が出ます。さらに、心臓のポンプ機能が弱くなると、全身に十分な血液を送れなくなる「心不全」という状態になります。進行すると突然死のリスクが高まるため、早期の発見と適切な管理がとても大切です。
心臓弁膜症の特徴
心臓弁膜症は徐々に進行するため、「最近疲れやすい」「階段をのぼるのがしんどい」と感じても、それが病気のサインとは気づきにくいのです。日常生活では大きな支障がなく、身体も慣れてしまうことも要因の一つ。特に高齢者の場合は、「もう年だから」と年齢のせいにして見過ごしがちです。
典型的な症状
症状が長期間出ないことも珍しくはありませんが、このような症状はないか、今一度確認してみましょう。
・息切れ/階段の上り下りや坂道で呼吸がしづらくなり息苦しさがある。
・動悸/心臓の鼓動が速く感じたり、ドキドキ感じたりする。
・疲れやすさ、だるさ/体が重く感じ、休んでも疲れがとれない。
・むくみ/ふくらはぎが重くはったような感じがする。靴下の跡がなかなかとれない。
1日の大半を座って過ごしている、外出する機会が少ないという方は特に感じにくいかもしれません。駅の階段を利用してみる、ウォーキングをしてみるなど、いつもより活発に動いたときに気づくことがあります。
自覚症状がなくても検査が必要な理由

原因と症状でもお話をしましたが、心臓弁膜症の主な原因は加齢。年齢を重ねるほど心臓弁が硬くなり、一部が石灰化して本来の機能を果たせなくなります。
65歳以上では約10人に1人が罹患しているといわれています。そのため、自覚症状がなくても健康管理の一環として心エコー検査を受けることをおすすめしています。とくに、高血圧や糖尿病、喫煙習慣がある方、家族に心臓病の方がいる場合は、早めのチェックを推奨します。
症状を自覚するときには進行している可能性がある
心臓弁膜症は定期健診やほかの病気の聴診で心雑音を指摘され、心エコー検査をして初めて判明するケースがほとんどです。息苦しさや胸痛などがあらわれたときには、中等症~重症になっているケースも多いのです。
適切なタイミングで適切な治療を受けるため
心雑音を指摘されたら、循環器を専門とする病院を必ず受診しましょう。
「症状がないのに?」と、つい精密検査を後回しにしがちですが、心臓弁膜症は自然治癒することはなく進行していく病気なので、検査で重症度を把握することが大切です。正確な診断のために心エコー検査や運動負荷心エコー検査を行います。
・心エコー検査(心臓超音波検査)
超音波を使って心臓の動きをリアルタイムで観察する検査。弁の状態や血液の流れを詳しく調べることができる。放射線を使わないため、妊娠中の方でも安心して受けられる。
・運動負荷心エコー検査
安静時の心エコー検査では診断できない、運動時にだけ見える異常を調べる検査。固定式の自転車(エルゴメーター)をこぎながら、心電図、血圧も同時に確認する。
当クリニックでも、定期健診で心雑音の指摘を受けて、検査を希望される方が増えています。自分がどんな状態かわかれば安心して日常生活を送れますし、定期検査により適切なタイミングで治療を受けることができます。
検査で「今の状態」を知ることが、先々の安心に

重症であっても自覚症状がない方もいらっしゃいます。早めに手術をしたほうが予後(治療の効果や健康寿命)がいいと判断しお話をするのですが、普段の生活に支障をきたす自覚症状がないと、なかなか決断できないケースもあります。
そのような場合は、運動負荷心エコー検査を行い、客観的データを示します。実際に、この検査を通して「息切れがする」「胸がドキドキする」など症状を自覚することで、ご自身の状態を理解し、治療へ進む判断がしやすくなります。日常生活では症状に気づきにくいからこそ、検査で把握するしかないのです。
軽症であれば3~5年、中等症であれば1~2年ごとの経過観察を行います。急に病気が進行することはほとんどありませんが、進行の仕方には個人差があります。その時々で適切な判断をするために定期的に検査を忘れずに受けましょう。
FAQ
Q1. 心臓弁膜症はなぜ自覚症状が出にくいのですか?
A. 心臓弁膜症は弁の変化がゆっくり進行するため、身体がその状態に慣れてしまい、早い段階では異変を感じにくいことが大きな理由です。高齢の方は「年のせい」と捉えてしまうこともあり、息切れや疲れやすさを病気の兆候と思わず見過ごしてしまう傾向があります。こうした背景から、症状が出た時にはすでに中等症〜重症に進んでいる場合も少なくありません。
Q2. 心臓弁膜症の検査を受ける必要があるのはなぜですか?
A. 心臓弁膜症は初期症状に乏しく、気づいたときには進行しているケースが多いため、定期的な検査が推奨されます。特に65歳以上の方、高血圧・糖尿病・喫煙習慣がある方、家族に心臓病の方がいる場合は、早めの受診をおすすめします。
Q3. 検査ではどんなことが分かりますか?
A. 検査では、ご自身の心臓の「今の状態」と病気の重症度が分かります。心エコー検査では、心臓弁の開閉の状態、血液の逆流や狭窄の有無、心臓の動きや負担の程度を確認します。運動負荷心エコー検査では、動いたときだけ現れる異常も確認でき、治療の必要性や適切なタイミングの判断に役立ちます。