2026年2月03日

みなさん、こんにちは。院長の太田光彦です。
これまで心臓弁膜症や心筋梗塞についてお話をしてきました。
心臓の病気になると、「以前のように生活ができないのでは?」「また発作が起きるのではないか?」と心配になる方が多くいます。個々の病状にもよりますが、過度に安静にしている必要はありません。復職したり、趣味のスポーツを楽しんだりしている方もいます。
今回は、心臓病の治療後から体力を回復し、社会復帰するために大切な「心臓リハビリ」についてお話します。
本記事の概要
心筋梗塞を発症しても、多くの方が心臓リハビリを通じて日常生活や仕事に復帰しています。心臓リハビリは、運動療法を中心に食事や生活習慣を見直し、再発や心不全を防ぐ総合的な治療プログラムです。医師や専門スタッフの指導のもと、安全な運動量を確認しながら体力を回復し、無理のない形で健康的な生活を取り戻すことができます。
心臓リハビリで回復・再発予防を図る
リハビリ(リハビリテーション)と聞くと、低下した身体機能を回復させるというイメージがあると思います。心臓病の発症後においても、機能を回復・維持するためにリハビリが必要です。実際に、心臓リハビリを通して多くの人が日常生活に戻っています。
心臓リハビリとは

心臓リハビリ(心臓リハビリテーション)は、心臓病の患者自身で体力・自信を取り戻して日常の生活に戻り、再発を防ぐための総合プログラムです。
その対象は、心筋梗塞、狭心症、大血管疾患、慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患を患った方および心臓手術を受けた方です。医師を中心に専門家がチームを組み、一人ひとりの状態に合わせて運動療法や食事・禁煙を中心とした生活指導を行います。
心筋梗塞の治療後には運動が欠かせない
心筋梗塞を患うと、「安静にしていた方がいいのでは?」と案じる患者さんやご家族は少なくありません。しかし、ずっと安静にしていると心臓の機能が低下し、回復が遅れる要因にもなります。
健康な方でも、1日中座りっぱなしの生活では血流が悪くなり、筋力が低下します。特に心臓への血流が悪化すると、全身に血液を十分に送り出せなくなり、疲労感やむくみ、息切れなどを起こすもとに。だからこそ、適度な運動を行うことが大切なのです。
医師の指導のもと心臓リハビリで再発要因を減らす
心筋梗塞は再発リスクの高い病気です。心臓の筋肉に血液を送る「冠動脈」が詰まらないよう、日々の過ごし方を見直すことが欠かせません。脂質過多の食事や運動不足、肥満などが重なると負担が大きくなるため、専門スタッフのサポートを受けながらリスク要因を解消します。
日常を取り戻すため、入院中から心臓リハビリを開始
心臓リハビリは大きく3つの期間に分けられます。
1. 急性期(発症・手術から1~2週間):日常生活へ復帰のためのリハビリ
2. 回復期(発症後約1~3カ月):社会生活へ復帰のためのリハビリ
3. 維持期(発症後3ヶ月以降~生涯を通じて):生涯にわたる活動的な生活と再発予防のためのリハビリ

まず病院内の廊下を200m歩けることを目標にして入院期間中から心臓リハビリを開始します。歩行に問題がなければ、医療スタッフの監視下で自転車こぎなど有酸素運動を中心に運動療法を実施。食事・服薬指導も同時に行います。
退院後は、週1~3日の通院頻度での心臓リハビリが推奨されています。
病気になったことによる気分の落ち込みや、不安感への対処など精神面のサポートも行っています。気がかりなことがあれば、一人で悩まず医師に相談をしてください。
無理のない運動強度をチェックする心肺運動負荷試験
心筋梗塞を発症してカテーテル治療やバイパス手術を行った後は、心臓の機能低下により、体力に自信がなくなる方もいらっしゃいます。どのくらいの運動をしていいか、自身では判断できず不安になりがちです。
そこで、「心肺運動負荷試験(CPX:Cardiopulmonary Exercise Testing)」をおこない、どの程度の運動をしたらいいか、データをもとに運動強度を設定します。
心肺運動負荷試験は、マスクや心電図、血圧計をつけて自転車をこぎ、運動中の心拍数や呼吸の状態などを確認します。その結果をもとに、「どのくらいの運動なら安全か」を判断し、リハビリのプログラムを作成。心臓リハビリ期間中は、定期的に心肺運動負荷試験を行い、体力の回復に合わせて運動強度や種類を調整していきます。
心臓リハビリ開始から150日間は保険適応
心臓リハビリ開始から150日間は健康保険が適応されます。年齢や所得によって自己負担割合は異なりますが、外来通院による費用は1回(1時間弱)500円~2000円です。
150日を過ぎても、自宅や地域の運動施設で運動を習慣化させることが、再発予防に重要です。
継続的な心臓リハビリで、最悪の事態を防ぐ
心筋梗塞を発症した人は、心臓がだんだん悪くなり命を縮める「心不全」などを起こしたりするリスクが高いです。ご自身の身体をいたわり、健康寿命をのばすことに努めましょう。
1日30分以上の有酸素運動を継続して、健やかな生活を
心臓リハビリでは、低下した心肺機能や体力を、安全に回復させていくことが大切です。そのために、運動は必要不可欠。自宅近くに心臓リハビリ外来がなくとも、在宅で行える場合もあります。最近では、スマートウォッチとアプリを利用した「遠隔心臓リハビリテーション」も徐々に導入されています。
日常的な運動は、テンポよく歩くウォーキングなど、少し息があがる程度の有酸素運動が効果的。1日30分以上、毎日継続することが推奨されています。15分の運動を1日2回に分けて合計30分以上でも同等の効果が期待できます。こまめに動くことは気分転換にもつながります。
ただし、無理は禁物です。息苦しさや胸に痛みを感じた際は、すぐに循環器内科を受診しましょう。

FAQ
Q1.心臓リハビリとはどのようなものですか?
心臓リハビリは、心筋梗塞などの心臓病後に、体力や自信を回復し、再発を防ぐための総合的なプログラムです。医師や看護師、理学療法士などが連携し、運動療法を中心に食事や生活習慣の指導、精神面のサポートを行います。
Q2.なぜ心臓リハビリが必要なのですか?
治療後に安静にしすぎると、心臓や体力の回復が遅れ、再発や心不全のリスクが高まります。心臓リハビリでは、適切な運動と生活習慣の見直しにより、心臓への負担を減らし、安心して日常生活に戻ることを目指します。
Q3.心肺運動負荷試験では何が分かりますか?
心肺運動負荷試験(CPX)では、運動中の心拍数や呼吸の状態を測定し、「どこまで運動しても安全か」を客観的に確認できます。この結果をもとに、一人ひとりに合った無理のない運動強度が設定され、安全な心臓リハビリにつながります。